法定後見制度のうわさ
「後見制度」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?
最近ではマスメディアや関連団体からさまざまな情報が発信されています。
中には、「後見制度はとんでもない制度だ」「使ってはいけない最悪の制度」という過激な意見もみられます。
まずは、よくある後見制度への批判と質問について回答いたします。
本当です。
現在の制度では、後見等の開始事由が解消されない限り、制度利用を中断することはできません。
後見が終了するのは、つぎのいずれかのときだけです。
① 本人が死亡したとき
② 後見開始の審判が取り消されたとき
後見開始の審判が取り消されるのは、本人の意思能力が回復するなどして、必要がなくなったときのことです。
したがって、認知症で後見を開始した場合は、認知症が治って意思能力が戻れば、制度利用を中断できますが、現代の医療では完治の見込みはありませんので、事実上、終身の制度利用になります。
誤解があります。
後見人は、被後見人(本人)に代わって財産を管理します。
これまで家族が本人の財産を事実上管理していたのであれば、後見人に管理を引き継ぐために、通帳等を後見人に引き渡す必要があります。
しかし、本人の財産は後見人が自由に使えるわけではなく、本人の必要に応じて、適切に支出することになります。
もともと、本人の財産は家族が自由に使ってよいものではないので、適正な管理に戻ったというのが正しい理解です。
本当の部分と誤解の部分があります。
後見人を誰にするかは、基本的に家庭裁判所の裁量で決まりますので、申立てをする方(家族など)が選ぶことはできません。
また、望んだ人が後見人になれなかったからといって、申立てを取り下げることや制度利用を中断することもできません。
特に専門家を後見人候補として推薦した場合は、事案ごとに不都合がなければ、推薦された方へ後見人就任の打診があるのが通常です。
親族が後見人についているケースも約20%ほどあり、絶対に後見人になれないというわけではありません。
ただし、次のような場合には、親族後見人ではなく専門職後見人が就くことが多くなります。1)ご本人の財産が多い
2)親族間で意見対立がある
3)申立ての動機が不動産売買、保険金請求、遺産分割など重要な法律行為をすることである
4)本人について訴訟・調停などの法的手続きを予定している
やっぱり後見制度って良くないの?
法定後見制度は、意思能力の低下した本人の権利を守るために重要な制度です。
特に、専門職団体・家庭裁判所からの監督を受けて専門職後見人が行う職務は手厚い保護であると言えます。
しかし、上記のような疑問・不満がでてしまうほど硬直的で、融通の利かない制度でもあります。
これは、本人の権利を確実に守るために生じてしまう制限ですので、仕方のないものです。
本人の財産を守ることと、柔軟に財産を使うことは二律背反で相容れないのです。
ではなぜ、「融通が利かない」と感じてしまうのでしょうか?
それは、意思能力を失った本人が「財産上の損をしない」ことを重視しているからです。
「自分が損をしても、贈与したい」「多少の損があっても、○○したい」というのは、本人に意思能力がなければできないのです。
では、本人が健康なときに「多少の損があっても、○○したい」と言っていた場合はどうでしょうか?
残念ながら、現在の制度では後見が始まってしまった後にそれを叶えるのは困難です。
その対策として、後見相当になる前の元気なうちに、一定の制度を利用することが挙げられます。
① 任意後見制度
② 家族信託・民事信託
※「家族信託」は、一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。(家族・親族で行う信託のこと)
法定後見、任意後見、信託の比較
3つの制度について、おおまかな特徴を比較します。
法定後見 | 任意後見 | 家族信託・民事信託 | |
---|---|---|---|
利用方法 | 裁判所に申し立てを行い、審判で開始する | 公正証書で任意後見契約を締結する | 信託契約を締結する。 (公正証書が望ましい) |
財産を管理する人 | 裁判所が選任した後見人 | 当事者が選んだ任意後見人 | 当事者が選んだ信託受任者 |
メリット | 法律上の取消権がある 裁判所の監督下にある | 後見人を選べる | 資産運用の設計を自由に決められる 当事者が了承すれば報酬は発生しない |
デメリット | 資産運用は原則不可能 後見人報酬が発生する | 後見開始の判断が難しい 後見監督人報酬が発生する | 他に比べ専門家報酬が高額 複雑な設計にすると運用が困難 |
おすすめする方 | 既に認知症などが進んでいる方 | 信頼する人に後見を託したい方 柔軟な資産支出を託したい方 | 複雑な資産運用、分配をしたい方 2次相続への対策もしたい方 |
費用の概算
当事務所の法定後見制度に関する報酬は、次のとおりです。
司法書士報酬 | 実費 | 備考 | |
---|---|---|---|
法定後見申立 (後見・保佐・補助) | 100,000円~ | 8,000円~ | 鑑定が必要な場合、別途鑑定費用(5~10万円)が必要です。 |
後見相談 | 5,000円 / 30分 | 0円 | 来所相談の費用に準拠します。 |
任意後見契約の締結 | 80,000円~ | 2~3万円 | 実費には公証人手数料を含む。 |
見守り契約・財産管理契約 | (初期費用)30,000円~ (維持費)10,000円 / 月 | 2万円~ | 契約内容により加算があり。 |
死後事務委任契約 | 50,000円~ | 15,000円~ | 実費には公証人手数料を含む。 |